国立がん研究センターの2020年のがん患者統計予測によると、がん罹患数では大腸がん、胃がん、食道がんがそれぞれ1位、2位、11位、死亡数予測ではそれぞれ2位、3位、10位となって多くのがんの中で、消化器がんが主流を占めています。胃がんの減少が叫ばれていますが依然として多く、がん全体ではまだ最上位の位置にあります。そしてここ数年来ずっと女性のがん死因のトップを占めるのが大腸がんで、若年化の兆しがみえています。また食道がんは最近増加傾向にある逆流性食道炎を起因としたバレット食道がんの増加が指摘されています。そうした流れの中で欠かせないのが消化器がんの診断の中心であります内視鏡検査で、ますます重要性が増しています。
ここで大事なのは内視鏡検査はただ診断するだけでなく、がんの治療、予防にも重きが移り始めていることです。近年内視鏡の精度は極めて高くなり、手技も大変進歩しています。また胃内視鏡検査ではピロリ菌を発見し、除菌することで胃がんの発生をある程度予防できます。そして早期に胃がんを発見することで外科的手術を避け、内視鏡的に切除することができます。大腸内視鏡検査でも大腸がんの芽でありますポリープ(腺腫)を切除することで大腸がんの予防ができますし、ほとんどの早期大腸がんも内視鏡で切除できます。便潜血検査を含めて下血の症状は、大腸疾患にとって最も大事な症状でありますので見過ごさないようにして下さい。
食道がんは少し進行したものでも予後不良です。また外科的手術は手技が難しく、合併症も多く身体にとって侵襲の強い手術の一つです。内視鏡で早期に食道がんを発見し、内視鏡的に治療できればその差は歴然で最も治療方法の差が出るがんの一つと言えます。
消化器がんの症状は信じられているほどなく、無症状の場合が多くあります。ある程度の年齢になりましたら定期的に胃・大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
私のクリニックは平成3年に開業し、現在までに約40000人の患者さんに12万4000件の内視鏡検査を安全に行っています(胃内視鏡検査約66000件、大腸内視鏡検査約58000件)。内視鏡検査に対して患者さんは二つの不安を抱えて来られます。一つ目は検査自体に対しての恐怖で二つ目は結果への不安です。診断結果への不安は仕方ありませんが、一つ目の検査への恐怖だけは取り除こうと痛みのない内視鏡検査を目指して診療を行ってきました。軽い麻酔をしますので検査後は少し休んで頂きますが、病気のことが不安で仕方ない患者さんに、笑顔で帰って頂くことが私を含めスタッフの何よりもの喜びです。
院長 沖 眞